28.12.16

トライアンフ 水冷 ボンネビル スラクストンR試乗!

試乗から半年経ってしまいましたが、スラクストンRとT120 ボンネビルについての試乗記をお伝えしようと思います。


ストリート・カップ、ボバー、ストリート・スクランブラー、スラクストン(スラクストンRではない)、T100とかなりラインナップが増えました。だからこそ、最初に新型としてリリースされた、ストリートツイン・ボンネビル・スラクストンRという、これらの3型を基準とすることが、多様に広がるボンネビル・シリーズから自分に合った一台を見つける近道になるのかも、と思い試乗記の続編をようやく仕上げるに至りました。

では、今回はスラクストンRのインプレッションをお送りします。



「圧倒的なカリスマを放つ、カフェレーサー」


Photo/Text Hiro 前田 宏行 (Rustless Production)

スラクストンR(以下スラクストン)と対面すると、乗り手にもある種の「気合い」を求めてくる雰囲気を感じる。簡単には操らせてくれそうにない、という緊張感はスポーツ・バイクならではのものであり、すでに「カフェ・レーサー」としての佇まいへの及第点を送るところだ。

T120 ボンネビルには2種類の走行モードが用意されているが、スラクストンには「スポーツモード」が加わり3種類となる。どれほど違うものなのかと、試すまでは怪訝だったが2速に入れて、勢い良くスロットルを開けた途端、通常の「ロードモード」とは明確に違う獰猛な加速に、心臓の鼓動が思わず引っ張り上げられてしまった。



Yamaha SRのキャブ車で例えるならば、「レインモード」は負圧キャブ。「ロードモード」は強制開閉のCVやCRキャブ。そしてこの「スポーツモード」は加速ポンプ付きのFCR、と言えば分かりやすいだろうか。そしてこのスポーツモードこそ、スラクストンの真骨頂だ。加速と風に備え体を伏せる、そして右手でエンジンに鞭を打つと噴き出るように反応する加速。うわっと一気に縮まる目前の車との距離に、フロントブレーキを入力すると、スポンジが落下のショックを包み込むような感触で、あっという間に減速する。このパワーには、これだけのフォークやブレーキが必要な理由が良く分かる。伊達じゃない・・・忙しくギアを上げ下げし、低回転から引っ張るのか、高回転を維持しようとするのか、、、どんな加速を引き出してやろう、と誘惑されてしまう。6速、5速、4速と、ギアを足早に落としていく時のタッチも楽しいものだった。


とはいうものの、いつも目を三角にして走るわけにもいかない。そこで他の走行モードが活きてくる。レインモードは、マシンのパワーの出方をとてもマイルドにしてくれる。骨抜き、とも言えるほどだ。ツーリングの帰り道にゆったり走りたい時や、渋滞時などに重宝するだろう。それぞれの走行モードは、明確な味付けがあるので楽しみの幅を広げると共に、乗り手を労ってくれる有り難いものだと感じた。



クランクが軽量化されているということで、T120と比べると低速でのパンチは薄いように感じる。低回転で、ノタノタと走っていても全く面白くない。スポーツモードでは3千回転以下のことは考えない、一気にアクセルを回す。4千回転から6千回転ほどまで、あっという間に上昇し、その間のパワーフィールはやはり鳥肌ものだ。体をぐっとバイクと同化させるように、前かがみに自ずとなってしまう。その人車一体感がたまらない、これぞ「カフェ・レーサー」の真髄だと言えるだろう。



この「媚薬」を味わう分、心身は疲労する。それは「スポーツ」をしていると思えば当然だ。このマシンは、たらたらと走ることを許してくれない。いや、走ってはいけない。スパルタンがゆえの強烈なカリスマ性。新生ボンネビル・シリーズの頂点に、君臨するに相応しいマシンだと感服した。

*ディティール説明


・タンクのデザインも、当時のスラクストンに装着されたものが踏襲されているようだ。緑タンクのトライアンフは筆者のもの。1971年製のボンネビルで、カラーは独自のものだが「スラクストン」レプリカのタンクを装着している。



・ハンドルは、トップブリッジ下でクランプされているが、そこから立ち上がっているのでハンドル自体の高さは程良い。また、こうしたクリップ・オンハンドルは「スワンネック」と言われ、昔のレーサーに使用されたディティールであることもポイントが高い。



・タンクのキャップも、50〜60年代のレースマシンによく使用された、エノット社のワンタッチ式のものをベースとしてあるため雰囲気が良い。ちなみに、このデザインは特にカフェレーサーのマシンだけに使われたわけではなく、イギリスの競技用マシンにはオン・オフ問わず、良く見られたディティールであった。



・トップブリッジや、メーター周りの仕上げはスラクストンの品質を誇示するディティールの一つ。乗り手が頻繁に視線を送る所がゆえ、このコックピットが放つ金属の味わいは所有欲を存分に満たしてくれる。当時のアフターマーケットパーツの中で、重い鉄製のトップブリッジを変更するため、軽量なアルミ製のものが販売されていた。その着目点に拍手を贈りたい。



・リムのサイズは前後17インチだという。クラシックなレーサーや、カフェレーサーであれば前後19インチや、前19・後18が定番。リムの幅はSRのように細い方が当時風にはなるが、このスラクストンにそんなアプローチはナンセンス。何をもって「カフェレーサー」を乗り手に体現させるかが重要であり、単にレトロな数値だけのディティールを含むことに意味は感じない。そのため、このスラクストンRのバランスは、現代のカフェレーサーとして秀逸なものだ。いつもは上述したサイズのリムを持つ、クラシック・モーターサイクルに親しむ筆者だが、17インチというサイズへの違和感は感じなかった。
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Special Thanks:
トライアンフ神戸

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